2ヶ月で10年分のデジタルトランスフォーメーション
この地殻変動をかつてないものとして特徴づけているのは、私たちの世界のデジタル化です。パンデミックの前、私たちの身の回りで起きていたデジタル変革は、明確な先行者(Leaders)と遅れをとる者(Laggards)を生み出しました。先行者は、最新のテクノロジーを取り入れ、フルスピードで前に進みました。一方、遅れをとる者は、デジタルトランスフォーメーションの移行に期限を設けず放置していました。皆さんもお分かりのように、期限のないことの問題は、最終的には手遅れになってしまうことです。長く待ちすぎた私たちは、もう今は急いで追いつかないといけないのです。
しかし、ネクストノーマルといえるこの地殻変動は、先行者と遅れをとる者の間の溝を広げるとは限りません。むしろ、各組織にとっては、デジタルトランスフォーメーションの取り組みに優先順位をつけるチャンスといえます。新型コロナ危機の特徴的な点は、10年に及ぶデジタルトランスフォーメーションを2ヶ月で実現することを組織に強制したことなのです。
その好例が医療業界です。イギリスでは、2019年にビデオ会議を介して行われた診療は、初診の1%未満でした。ロックダウンの状況下では、100%の患者が遠隔でトリアージされ、その後、対面で診療を受けたのは 7〜8% のみです。さらに、銀行業界のオンラインバンキングは、劇的にデジタル化が進見ました。オンラインでの手続きは、新型コロナ危機の間に、10%から90%に上昇しましたが、サービス品質の低下はなく、コンプライアンスの点では向上しました。そして、小売業は、オンライン注文の品物を2時間以内に配達するエクスプレスサービスを立ち上げる必要がありました。
「ネクストノーマル 」で組織に起こる地殻変動とはどのようなものでしょうか?あなたが先行者であろうと、遅れをとる者であろうと、今すぐにでも実行できる最大の地殻変動は、BCP(事業継続計画)と予算の優先順位の見直しの2つです。
BCP(事業継続計画)の完全な書き換え
現在のBCP(事業継続計画)は、すべて9.11の惨劇の後に構築されたもので、復旧、ハウジング、サーバーバックアップなどに重点が置かれていました。BCPは組織的に必須のものであり、企業はBCPで定められたシステムのために何十億もの投資をしてきた。今回の新型コロナ危機に対しては、残念ながら多くのBCPがデジタル部分の対応が全く伴っておらず、このような災害時に事業継続性を確保するための準備ができていませんでした。私たちが新しい現実に対応するためには、これまでのBCPを捨てて、完全にゼロから書き直す必要があります。
予算の優先順位見直し
一般的に、危機的状況に陥った場合、まず最初にするのは予算の削減であり、それも大規模な予算の削減(最大20%程度)が行われます。組織のCIOや購買部門にとっては、特に事業継続性を確保するためのテクノロジーが担う役割を考えると、これは厳しいことです。ネクストノーマルにおける予算の優先順位見直しは、多目的SaaSプラットフォームに焦点を当てることになるでしょう。また、予算の優先順位見直しはソフトウェアの利用状況に基づいて行われるため、組織全体でどのようにソフトウェアが利用されているかを可視化することが重要といえます。
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新型コロナ危機による地殻変動は、まさにデジタル化のネクストノーマルへと導くものです。ネクストノーマルは、すでに始まっていて、デジタル技術を最大限に活用する、より快適なビジネス環境へ私たちを導く可能性を秘めています。
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